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【板橋区議会・一問一答】学校工事が進まない!その裏に「入札不調ショック」、区議会で問い続けること
以前区民の方から、「〇〇学校、そろそろ改築工事って聞いていたけど、なかなか始まらないね」と聞かれたことがあります。もしくは保護者の方で、お子さんが通う学校のお知らせで「工事の予定が変更になりました」という文面を目にした方もいるのではなでしょうか。
実は今、板橋区では「入札不調」という問題が、行政運営の大きな壁となっています。今日は、この問題について考え、板橋区議会でどのような質疑をして、どう向き合っているのかをお話ししたいと思います。
入札不調ってどういうことですか?
まず、「入札不調」とは何なのかについて、簡単にご説明します。
板橋区が公共工事を行う際に、「この工事は〇〇円以内でやってもらおう」と予定価格を決めて、その金額以内で工事ができる業者を募集し入札にかけます。しかし、入札の結果、その予定価格を上回ってしまったり、また手を挙げる業者がいなくて、業者が決まらないことを指します。
こうしたことが実施に起きてかなりの影響を及ぼしたのが、志村小学校・志村第四中学校の改築工事です。小中一貫校への生まれ変わりを目指す非常に大きなプロジェクトですが、入札不調により工事の開始が遅れ、新校舎の完成が当初の予定よりも約1年遅れる見込みとなっています。期待してくれていた児童・生徒の皆さん、そして保護者の皆さんには、大変心苦しく感じています。
他には、学校の新築だけでなく、プールの塗装や施設の空調交換といった身近な修繕でも、同じような理由で施工業者がなかなか決まらないケースが出ています。
なぜ業者が決まらないのか、考えらえること
おそらく、区の予定価格が安すぎるのではないか、予算がちゃんとついていないのではないかと思われる方が多いかもしれません。もしかしたらそれも一因なのかもしれないのでですが、背景には日本全体、そして板橋区の立地的な事情も絡め合っています。
まずは一番大きいのは、物価と人件費の急激な高騰にあると思います。 皆さんの家計と同じく、建設業界も資材価格の高騰に苦しんでいます。区が半年から1年前に「これくらい掛かるだろう」と積算をして入札をしても、いざ工事を発注する時には相場がさらに上がってしまっていることが多くなっています。
またこれに少し関連した話になるのですが、深刻な人手不足にもあります。建設業界は今、圧倒的な人手不足と言われています。そのため、業者さんは利益が出て、工期に無理がない案件を選ばざるを得ない状況にあるとお聞きしました。
また、板橋区ならではの現場の難しさもありそうです。板橋区は住宅が密集していて、「道が狭くて大型車両が入りにくい」「授業をしながらの工事で、音や安全管理に非常に手間がかかる」といった現場は、コストやリスクが高いため、敬遠されがちなのだとか…今後が本当に心配です。
これからのリスクを避け、計画的に進めるために
この問題を「しょうがないね」で済ませることはできません。なぜなら、一つの工事の遅れは次から次へと押し寄せるドミノ倒しのリスクをはらんでいるからです。
板橋区には、昭和40〜50年代に建てられた公共施設がたくさんあり、これから一斉に建て替えの時期を迎えます。一つの学校の工事が仮に1年遅れると、次に予定していた別の学校の工事も後ろ倒しになり、老朽化した施設をだましだまし使い続けなければならなくなってしまします。
そうかといって、入札不調を避けるために予定価格を上積みして予算をこれでもかと無尽蔵に増やせば、区民の皆さんからお預かりしている大切な税金を適切でない使い方をすることになります。
適切なコスト管理とスケジュールの遵守。この難しいバランスを取ることが、今の板橋区には求められています。
ちなみに、板橋区は公共施設整備や維持のためにかかる年間にかかるコスト(LCC)を試算しています。この試算は、区の実施計画を作るたびに提示されるのですが、今回の実施計画の改定にあたっても上昇が予想され、大きな懸念となっています。
そこで、私は板橋区議会の決算調査特別委員会の総括質問(2025.10.22開催)にて、今後のLCCの上昇についての懸念を示し、その上昇幅について質疑をしました。
田中やすのり(質問):ライフサイクルコストの上昇について
公共施設の整備、学校施設の整備について話を進めますけれども、まず最初に確認をしたいのが、建物を建てて維持していくときのライフサイクルコストについてです。この上ぶれがもう今から容易に想像がつきます。
今までのNo.1プランだと平均コストが212億、年間で割るとかかりますというような試算が出ていました。これがどのくらい上ぶれていくのかということを確認したい。東京都の標準建物予算単価というのが出されていますけれども、令和6年の予算用に使ったのは1.68という単価が示されています。令和8年の次の予算に使っていく数字は1.97になるということをお聞きしておりまして、単純に117%の上積みが予想されます。
年間の212億に約1.2倍を足すと、もう大変なライフサイクルコストになっていくなということが想像できるんですけれども、今後の上ぶれについて、どのような試算をなさっているのかお聞きをいたします。
○政策経営部長(答弁):
現在、事業環境の変化や労務単価の更新などを織り込みまして、ライフサイクルコストの精査を行っているところでございます。11月の閉会中の企画総務委員会で、No.1プランの素案の報告時に明らかにする予定で今進めているところでございますが、現時点での大まかな見通しでございますけれども、ご紹介いただきましたNo.1プラン2025改訂版でお示しした212億円、年平均からおよそ50億円ほど上ぶれるんではないかという見込みでございます。
○田中やすのり(コメント)
50億円というと、やっぱり1.2倍ぐらいの上昇が見られるので、今後10年ごとに幾らかかっていきますというのが出ていますけども、恐らくそれも上がって出てくるんだろうなと思いますので、企画総務のほうでしっかりと数字を追っていきたいなというふうに思っています。
2025.10.22開催の謙さん調査特別委員会の総括質問にて今後のLCCについて質疑を行う
なお、その後に開かれた企画総務委員会において、区からはNo.1プラン2028・実施計画(素案)が示され、今後の最新のLCCも「平均269億円/年」と提示されました。やはり上昇傾向が続いています。
参考として、今までのLCCの推移を下記にお伝えをしておきます。上昇の傾向が一目瞭然だと思います。
これからを見据えて、板橋区議会で質問しました!
私は議会人としても、ただこの事態を見守るだけでいるわけにはいきません。
板橋区に対しては、物価変動を見越したより精度の高い予算見積もりを求めるのはもちろんですが、今後のライフサイクルコストの上昇に向けて、何らかしらの新しい手だてが求められてくると思います。
そこで、設計と施工の一括発注方式(デザインビルド方式)や公民連携(PPP)の手法を提言しました。これは決算調査特別委員会の総括質問(2025.10.22開催)において提言をしましたので、ご報告します。
田中やすのり(質問):デザインビルド方式や公民連携の手法の検討について
これから高まっていくであろうLCCに対して、どう対応していくのかという点をお聞きをしたいと思います。デザインビルド方式、設計と施工を行っていくところを一括で発注することで、資材の管理をしたり、人の管理をしっかりしたり、必ず工期で終わるというようなことで、コストの圧縮も図ることができます。
また、今年の夏の企画総務委員会の委員会では、実は公民連携の手法を岩手県のオガールプロジェクトというのを見てまいりました。この中では、建物は民間に建てていただいて、その中に行政の施設が入る。行政は、そこからも少し賃料を頂けると、もともと土地を持っていたそうです。このような公民連携の手法も使いながら運営がなされていました。
今後のライフサイクルコストの上昇に向けて、何らかしらの新しい手だてが求められてくると思いますけれども、区の見解を伺います。
○政策経営部長(答弁):
持続可能で魅力ある公共施設を実現するために、基本計画で定めた基本方針であります施設総量の最適化、計画的な管理、保全による耐用年数の延伸、区有財産の有効活用、多機能化と魅力ある公共施設への再建、この4つの視点で再整備を進めていくというようなことで、基本計画のほうを見直しているところでございます。その際には、新たなLCCに基づきまして基金起債の適切な活用を図るとともに、施設の特性、特徴なども踏まえまして、ご提案いただいたような手法も含めて、経費効果を見極めながら、民間活力の活用を積極的に検討してまいりたいと思っております。
○田中やすのり(コメント):
特に大きな案件については、工期の短縮、そして施工者とつくる設計とが一緒になって同時に進むことで、そこでもコストダウンが図られると聞いています。ご検討のほどよろしくお願いいたします。
デザインビルド方式や公民連携の手法について提言を行う(2025.10.22決算調査特別委員会の総括質問にて)
公共施設は、区民の皆さんの財産であり、子どもたちの教育や学びの場でもあり、地域のコミュニティ拠点でもあります。安心・安全な施設を、可能な限り早く、そして無駄なく適正な価格で作れるよう、引き続き知恵を絞り提案をを続けていきます。
最後に、デザインビルト方式や公民連携の手法について、補足の説明をして本日の記事を締めくくります。
☆設計と施工の一括発注方式(デザインビルド方式)について
デザインビルド方式(DB方式)は、発注者が設計業務と施工業務を単一の業者に一括発注する方式です。発注者は詳細な設計図ではなく、機能・性能・品質などを定めた要求水準書を作成し、DB事業者がそれに基づいて設計から施工まで一貫して責任を負います。
主なメリットは、設計・施工の並行進行による工期短縮、施工技術の早期反映によるコスト最適化、責任の一元化、発注者の管理負担軽減です。一方デメリットとして、設計品質のチェック機能低下、途中変更の困難さ、価格妥当性の比較検討の難しさが挙げられます。
DB方式の成功は、発注者が作成する要求水準書の明確さに大きく依存します。工期とコストの確実性を重視し、事業者の技術力を活かしたい場合に有効で、必要に応じて第三者による品質管理支援の導入が推奨されます。
☆公民連携(PPP)の手法について
公民連携(PPP)は、国や地方自治体が民間事業者の資金・ノウハウ・技術を活用して公共サービスを提供する形態です。民間への委託範囲やリスク負担により多様な手法があります。
代表的手法として、PFI(民間資金による施設建設・運営)があり、BTO方式(建設後に所有権移転)、BOT方式(事業期間終了後に移転)、BOO方式(民間が所有継続)、DBO方式(設計・建設・運営の一体実施)などがあります。また、コンセッション方式は所有権を公共に残し運営権のみ民間に設定する手法で、空港や有料道路で活用されます。
主なメリットは、財政負担の軽減、サービス品質の向上、ライフサイクルコストの最適化、リスクの分担です。一方デメリットとして、事業者選定の複雑性、長期契約による柔軟性の欠如、継続的なモニタリングの必要性、透明性確保の重要性が挙げられます。事業特性に応じた適切な手法選択が成功の鍵となります。
2025年8月には、私が委員長を務める板橋区議会の企画総務委員会として、公民連携で注目集める紫波町のオガールプロジェックトの視察を行いました。紫波町のオガールプロジェクトは、「PFI」(役場庁舎)や「公募型PPP」(オガールプラザ)、「公有地活用(土地賃貸)」など、多様な手法を地域全体のまちづくりという包括的な枠組みで活用する、極めて先進的かつ独自性の高い公民連携の成功事例として位置づけられています。
<関連記事>
【板橋区議会】地方創生の成功モデルといわれる「オガールプロジェクト」を企画総務委員会で視察(2025年7月29日)
https://www.tanaka-yasunori.jp/new/20250729news.html
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〜小さなことの積み重ねが必ず大きな成果に繋がる
板橋区議会議員 田中やすのり
https://www.tanaka-yasunori.jp/index.html
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【子育て中のママパパへ】
「あなたの子育てを応援します!」
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板橋区議会議員田中やすのり_記事:【板橋区議会・一問一答】学校工事が進まない!その裏に「入札不調ショック」、区議会で問い続けること20251123
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