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平成28年度決算への賛成討論(平成29年10月26日)

板橋区議会議員田中やすのり

田中やすのり板橋区議会議員

 只今から、板橋区議会自由民主党議員団を代表して、報告第1号「平成28年度東京都板橋区一般会計歳入歳出決算」、報告第2号「平成28年度東京都板橋区国民健康保険事業特別会計歳入歳出決算」、ほか2特別会計決算の認定について、賛成の立場から討論を行います。

 平成28年度の日本経済は、アベノミクスの取組によって、企業の収益が高水準で推移しました。その中で、雇用と所得環境に改善が見られ、緩やかな回復基調が続きました。景気回復は18年ぶりに名目GDP、実質GDP、GDPデフレーターがそろって前年比プラスとなったことや、雇用・賃金関係の指標も1990年代初以来となる改善をみせていることからも明らかと言えます。ただ一方では、個人消費は力強さを欠いた状況となっており、EU離脱や新興国経済の減速など日本経済を取り巻く世界経済の先行きについてのリスクも高まったままの状況であり、今後も注視が必要です。

 さて、板橋区における平成28年度は、新たな基本構想に基づく、「板橋区基本計画2025」及び「いたばし№1実現プラン2018」のスタートとなる重要な年でありました。基本計画2025に掲げる未来創造戦略を踏まえて、待機児対策や教育ICT化推進、児童館相談機能充実など、将来の日本を支える子供たちを育むための、まさに将来への発展に向けた先行投資が行われました。また、地域包括ケアの推進などによって、健康長寿のまちづくりや未来へつなぐまちづくりに向けて、事業の選択と集中も意識されており、今後10年の区の成長と発展に向けての区政運営がしっかりと始動したものと受け止めます。

 ただし、基本計画2025に挙げられていない事業があり、かつ大きな投資や継続的な財政負担を伴う事業である可能性が高いのにも関わず、議会での十分な議論を経ずに進んでいく区政の現状があります。例を挙げると、板橋駅前用地・B用地とJR東日本の用地のとの一体開発事業などです。区政運営を航海に例えるならば、羅針盤を持たず、十分な食料も積み込まず、海に出るようなことはあってはなりません。私どもはこうした区政運営に対して若干の懸念を抱いております。この点については最後に触れたいと思います。

 それではまず、平成28年度の一般会計決算を概観します。歳入が2,069億6045万円、歳出が2,026億3047万円となり、平成29年度へ繰り越すべき財源を差し引き、43億2997万円の決算剰余金が生じました。実質単年度収支でも2億6177万円と黒字となっています。財政調整基金からの繰り入れは行わずに、2年連続での収支均衡型決算が達成であります。財政調整基金を始めてとして基金全体で、26億5430万円の積み立てを行うこともでき、評価するところです。

 なお、平成28年度末には議会に基金と起債の活用方針の報告がありました。活用方針に示された通り、現在のような好調と言える経済状況下にこそ、景気の循環を考慮し、将来を展望した財政運営をなされることが肝要であると思います。福祉費が一般会計において60%に迫る状況にあるからこそ、景気の低迷期においても、その福祉水準を守るために、一定程度の基金の積み立てが必要です。約1400万円の積み立てにより平成28年度末の財政調整基金残高は約190億8500万円となりましたが、23区の積み立て平均額である約250億を意識し、さらなる積み立てが求められます。また、財政調整基金だけでなく他の各種基金の積立額についても、その適正性と妥当性を区民の皆様にご理解いただけるよう、今後も、財政分析を進め、更なる説明が必要であると申し添えます。

 歳入では、区の主要な財源である特別区民税が、昨年度と比べ、12億3千万円の増額と堅調な推移となりました。収入率も平成27年度が93.5%であったところ、本年度は94.9%となり1.4ポイントの改善が図られました。区民の所得状況下からすると大変な努力があったものと推察いたします。今後も債権管理条例に基づいた適切かつ公正な債権管理を徹底し、収入未済の縮減に努めるとともに、不能欠損を発生させない取り組みを求めておきます。

 一方、特別区交付金のうち普通交付金に関しては、法人住民税の国税化などの影響により、好調な経済状況であるのにかかわらず、30万1千円増のほぼ横ばいの状況になりました。地方消費税交付金についても同様に、国が都市部の税収を地方に配分する観点から、人口の比率を引き上げる見直しを行ったことが影響し、前年比で11億3264万円も減少に転じました。今後もこうした国の動きに注視し、区長会などを通じて、粘り強く国が進める税源偏在是正の動きに対し、正当な主張を訴えていく必要があります。

 国と東京都からの交付金は、生活保護費が減少したにも関わらず増加しています。その大きな要因は保育園待機児対策や障がい者の自立支援に対するものですが、いずれも経費の増という歳出に付随するものであり、今後の後年度の継続的な負担に注意する必要があると考えています。

 歳出においては、福祉費の予算に占める割合が概ね60%と突出している現状は、明らかに異常と言えます。さらに、扶助費の割合は、昨年度より0.7ポイント増大し、39.2%となり、板橋区の構造的課題とも言えます。財政の硬直化がなお一層進んでいると言え、厳しい財政状況がさらに進んでしまうことが危惧されます。今後、どのように舵を切っていくかは、十分な調査研究が必要です。そして、板橋区が、将来に亘って区民福祉の向上を図っていくためには安定した財政基盤が必要であることを申し上げます。

 また公共施設の更新については、小豆沢体育館プール棟、しらさぎ児童館・母子生活支援施設の改築が行われ、小学校施設の改修に25億3998万円、中学校施設の改修に16億3193万円が注がれました。これからも最小限の経費で、かつ適切な時期に実施することを常に意識をしていただきたいと思います。

 なお、元職員からの懲戒免職処分取消等請求訴訟、未払残業代等支払請求訴訟について和解したことに伴う退職金・解決金などとして、予備費が充用されています。区は懲戒分限審査委員会委員の責任を問うことはできないと言わざるを得ないと結論付けました。今回の事案がどう教訓として活かされていくのか、勤怠管理の体制はどう徹底されていくのかなど、今後も説明責任は残っていくことを申し添えます。

 次に財政指標について考察します。財政構造の弾力性を判断する指標である経常収支比率は83.5%と、前年度よりも0.3ポイント悪化しました。平成24年度から続いてきた改善傾向が途切れることとなりました。平成20年度から継続して、適正と言われる70%から80%の水準から離れた状況も続いています。これは、保育園待機児対策や障がい者の自立支援費の増が主な要因であり、福祉費の分析から何ができるかを考える時期に来ています。

 例えば、障がい者の自立支援給付費は、5年前の平成23年度と比較すると、約26億7500万円も増加し、84億1869万円に達しています。分析すると、児童放課後デイサービスによる居宅介護給付費やグループホームへの施設訓練給付費が大きな要因と考えられます。新たな計画づくりには、ニーズ調査の結果を踏まえ、サービス提供の量と質を精査し、自立へとつながっていくように要望をしておきます。

 また、待機児童対策を積極的に進めており、児童福祉費が急速に膨らんでいます。保育料の見直しだけでなく、区の財政負担が軽い保育サービスの誘導など、子どもの人口が10年以内に減少することを想定した対応を常に意識していただきたいと考えます。

 公債費負担比率については、2.8%となり前年度に比べ2.4ポイント改善しましたが、これは前年度に減債基金へ10億円積み立てたものが、平成28年度は行わなかったことによるものであり、更なる積立準備も必要なのではないかと考えます。なお、特別区債調書に記載されているとおり、平成27年度末の起債残高が362億8千万円であったものが平成28年度末では354億8千万円まで減少しています。今後とも、将来世代の負担軽減に努めていただきたいと思います。しかし一方では、公共施設の更新需要には一定程度の起債発行も必要であるとも考えます。多世代の負担の公平性の観点を考慮し、分かりやすい説明がなされることを希望します。

 人件費比率は16.3%となり、数年間連続で改善してきた人件費比率が0.1ポイントではありますが上昇しています。適正な人件費比率の把握を常に考慮しつつ、職員の労働生産性の向上に努めていただきたい。また、物件費の中に含まれる実質的な人件費についても、その把握の必要性を指摘しておきます。

 健全化判断比率につきましても、法で求められている4つの指標のいずれにおいても、早期健全化基準を大きく下回っており、この点では問題のない水準であると認識しております。

 次に、「いたばし№1実現プラン2018」に掲げる三つの目標を達成するための各政策に沿って申し上げます。

 第一は、「未来をはぐくむあたたかいまち」についてです。初めに、「子育て安心」については、「いたばし版ネウボラ」である「妊娠・出産ナビゲーション事業」、子育て応援児童館「キャップス」として児童館が新たに再出発しました。妊娠初期から乳幼児期の子育て期間に対して切れ目のない子育て支援の施策の展開であり、これらの取り組みはまさに組織の垣根を越えたものと評価します。

 保育所の待機児対策事業につきましては、認可保育所十園の開設を始めとして、過去最大規模の1069名の定員増を図りました。今後も計画に沿った着実な推進と人口減少の将来を見通した対応をお願いします。

 続いて、「魅力ある学び支援」についてです。まずは、「区立学校学級安定化対策事業」として、子どもの学校における心の満足度等を計ることにより、不登校、いじめ問題への対応や学級経営の安定化を図ることに努め、併せて、学力の定着・向上に努めました。

 教育ICT化推進に関しては、全中学校の全学級に電子黒板等のICT機器の配備、無線LANの整備もなされ、すべての区立小中学校の普通教室のICT化が完了したことになります。今後は、学力の向上という成果を是非とも期待します。

 特別支援教室を小学校二十七校に設置し、平成29年度からの巡回指導に向けての整備を進めました。指導・授業内容については絶え間のない研究と改善を求めます。

 「子育て安心」とも通ずるところのある「あいキッズ」事業を土曜日にも拡大したことにより、全児童対策としての質の向上も図られ、保護者の満足度も高いものと認識します。

 次に、「安心の福祉・介護」に関しては、地域包括支援センター二か所の新設、地域密着型サービス拠点、特別養護老人ホームの整備を支援しました。また、障がい者福祉センターに「障がい者基幹相談支援センター機能」を追加し、用意された「自立支援メニュー」を効果的にサービスが受けられる環境を整備しました。高齢者および障がい者の自立支援の視点を明確に持ち、さらなる事業進展が期待されます。

 第二は、「いきいきかがやく元気なまち」についてです。

 まずは、高島平ふれあい館内に、シニア世代の雇用・就業の拡大と社会参加が推進されるよう、「ワークス高島平」の開設に着手し、本年4月に開設しました。

 また、地元企業である株式会社タニタとの協働・連携により運動や食習慣の改善に取り組む「子どもの健康づくり事業」を実施しました。このことをつなぎ、天津わかしお学校における「天津ライフスタイル」を確立し、今後も区立小学校などに広め、「いたばしライフスタイル」による健康づくりを推進しています。

 次に、「心躍るスポーツ・文化」においては、小豆沢体育館プール棟について武道場との複合化を図った実施設計が終了し、平成三十年の開設に向けた改築工事に着手しています。なお、プール棟完成後は、小豆沢公園全体の整備計画も予定されており、区長が「板橋区のスポーツのメッカ」と呼ぶスポーツに特化したエリアが誕生する予定となっています。こうした中、小豆沢をホームタウンとするプロバスケットボールチームは3部降格となりましたが、地元ファンを中心に2000名を超えるアリーナ建設を求める署名が集まり、区に手渡されましたことを、重く受け止めていただきたいと考えます。今後もプロスポーツチームを通じた区民のスポーツ機運の醸成と地域の活性化がなされることを望みます。

 更に、「野口研究所」及び「旧理化学研究所板橋分所」の再整備に関しては、「陸軍板橋火薬製造所跡」として国の史跡指定を受けることができました。今後は整備にあたっての財源の裏付けが強く求められおり、その説明を求めます。

 次に、「光輝く板橋ブランド・産業活力」においては、「ものづくり企業立地継続支援事業」の展開など、研究開発型企業への支援機能の拡充が図られました。更に、「いたばしオリめし2016」の開催や「光輝く飲食店経営ネットワーク創造事業」を実施し、産業、商業両面の活性化を図られました。

 第三は、「安心・安全で快適な緑のまち」についてです。

「緑と環境共生」に関しては、平成28年度において、不燃ごみの三十%のリサイクル率の向上を図り、本年度は、九十%の資源化を目指しており、成果への期待が寄せられています。

「万全な備えの安心・安全」については、熊本地震の際の支援についてです。23区で一番に支援物資とともに職員を派遣したことは高く評価します。被災地での教訓を板橋区の防災対策に活かされるように要望します。また、災害弱者に対し、的確で迅速な支援をめざして「板橋区避難行動要支援者名簿」をシステム化しました。今後はその活用が求められます。

「板橋区老朽建築物等対策条例」が制定され、衛生面や防犯面で課題のあったいわゆるごみ屋敷の解体除却が行政代執行によって実施されたことは高く評価します。今後も危険な空き家や老朽建築物の解消を推進していただきたいと強く願います。

「快適で魅力あるまち」の実現に向けては、「アーバンデザインセンター高島平」を設立し、プロムナードの再整備に向けて基本構想の策定に着手しました。板橋の街づくりでは、新たに空地などに街を描き、創るということは想定されません。既にある街をリ・デザイン、再配置する街づくりとなりますが、このアーバンデザインセンターの手法が板橋の街づくりに有効に機能するのか、注視をしていきたいと思います。また、まちづくりに関しては、長らく停滞していた、大山駅周辺地区のまちづくりや鉄道立体化などが動き出し大いに期待しているところです。

「計画を推進する区政経営」では、新たな公会計制度に対応した複式簿記・発生主義による新公会計システムの構築に着手し、平成三十年一月の本稼働に向けた取り組みに大いに期待するものです。財政運営や政策形成、資産、債務管理など区政に活用するだけでなく、議会・区民に対する明確な説明がなされることに期待するものです。

 以上、平成28年度の主だった成果について述べてまいりましたが、平成28年度の事務事業全体の進捗状況については、実施計画事業をはじめ、概ね着実に実施されているものと評価いたします。さらなる施策の充実、事務事業の着実な推進と効率化に向けて、今後とも取り組まれことをお願いいたします。

 そして、大切なので重ねての意見となりますが、増大する福祉費、ようやく緒に就いた公共施設の更新に関しては、景気の波に左右されない強力な財政基盤が必要なことは明らかです。公共施設については、過度で豪華な設備や施設は必要ありませんので、最小の経費で必要な施設を必要な時期に整備することが肝要です。今後は、今ある計画を大胆に見直すことも必要となることもあろうかと思います。将来の行政需要に対応するための基金積み立て、起債発行に関してですが、区はさらに財政分析を進め、「基金及び起債活用方針」についても、説明責任を果たすとの発言がありました。しっかりとした資料や数値を基に、説明責任を果たし、行財政改革による健全な財政基盤の確立に向けて取り組んでいただきたいと強く要望します。

 余談となりますが、平成29年度予算は22億円もの財政調整基金を繰入れ、取り崩す計画となっており、収支均衡が崩れる可能性があります。今後も平成28年度のように、収支均衡型の財政基盤を確立できるように努力を求めておきます。

 それでは最後に、板橋駅前B用地とJR東日本の用地のとの一体開発事業について一言、添えておきます。駅ビル内のホール設置の案件について、先日の総括質問で、明確なお答えをいただけなかったと捉えています。財源負担についても曖昧な答弁であり、施設の目的についても必要性を理解できませんでした。近隣に同様の用途の施設があれば、見直していくことが必要です。行革の常識であると思っています。

 その他、児童相談所の設置にも多額の経費が必要になります。税源については東京都の財調の算定に含まれるだろうという楽観的に答弁がございましたが、その財源は全く明らかなっておりません。ちなみに、この板橋区板橋口駅前用地(B用地)などこの2件は、平成28年度が初年度の基本計画2025に入ってすらいません。財源を明らかにし、議会での議論を経たうえで実施時期を含め決めていくのが定石ではないでしょうか。区政運営について善処を求めたいと思います。

 次に、3つの特別会計であります。

 3特別会計の収入率について昨年も指摘しました。特別会計全体の保険料収入率に若干の改善が見られますが、まだまだ改善の余地があると思っています。一層の努力を期待します。

 特に、国民健康保険特別会計については、30億円余の決算剰余金が生じています。これまでも、区一般会計からの繰り出し金に関して、度々、指摘がありました。今後の改善を望みます。

 区民の所得水準から推察して、収入確保にはご苦労も多いと思いますが、特別区民税と同様に、負担の公平性の観点から、収入未済の解消に向けて、さらなる徴収努力を要望し、3特別会計全体としては、概ね妥当な決算内容であると判断いたします。

 坂本区長におかれましては、区民の思いを十分に斟酌され、区民が安全で安心な生活が送れることを第一に、そして板橋区が今後も伸張発展できるよう限られた財源を効果的・効率的に活用し、より多くの成果をおさめられるよう、切にお願い申し上げ、平成28年度一般会計及び3特別会計を認定することに賛意を表し、私の討論を終わります。