議会改革で注目を集める長野県飯綱町

Iiduna Nagano 

合併後の第三セクターの経営破たんを契機に本格的に始まった議会改革

飯綱町は平成17年に牟礼村・三水村が合併して発足しましたが、その合併直後に旧牟礼村の第三セクターが突然経営破たん。金融機関から裁判を起こされ、約8億円もの損失補償を支払うこととなりました。当然、住民からは厳しい批判が沸き起こります。議会に対しても「チェック機能は果たされていたいのか」と議決への責任が強く問われることになります。こうした経緯を踏まえて、飯綱町では議会改革の取り組みを始め、今では全国から注目を集めるまでに発展していきました。「議会改革は、議員の意識改革である。」と議長は力強く語ります。また、「(最初の)3年間は孤独の戦いだった。」と雑談でポロッと本音が見え隠れします。私どもには孤軍奮闘してきた姿と努力が伝わりました。
取り組みとして、まず町民が求める議会像を「政策提言のできる議会」などの6つに集約します。そして町民に信頼される議会を目指して8項目の議会改革を宣言します。この宣言で、一般質問に思い切って「一問一答形式」が導入されることになります。議会質疑のやり取りが住民にとってより分かりやすく明確になるように意図された施策と推察できます。多くの自治体は一括質問方式を採用していることが多く、議員が質問を数十分に渡り読みつづけ、それに対する答弁がまた数十分朗読されるといった運営がなされています。住民にとってはやはり分かりづらいし、退屈な運営ですね。なぜこういう運営が多いのか。それは事前に行政と議員が質問と答弁内容について調整を行う「質問取り」が影響しています。質問調整を行っているため、本会議の一般質問の時には議員と首長の双方に既にセリフ・原稿が決まっていることになります。だから、本番の本会議では原稿をただ読み上げることに終始します。ただし、質問取りには議員側には一部メリットがあることも事実で、質問や提言を行政側に提示し、やり取りを行う過程で前向きな答弁を引き出し、施策を前に進めることを促しています。一長一短はありますが、思い切って一問一答方式を採用した飯綱町議会の前身力には敬意を表します。

議会改革は議員の意識改革!

飯綱町に話題を戻しますが、平成24年9月に議会基本条例が制定されます。この条例の条文を見ると、議会改革の実践の成果を書き込み、具体的な施策が条文に謳われています。全国的にもかなり踏み込んだ非常に特徴的。例えば、「夜間議会・休日議会」、「議会広報モニター」、「政策サポーター制度」、「議会白書、議会の自己評価」などが記されています。議会の見える化や政策提言力を高めることを進めることを意図し、どれも先進的で他の自治体がなかなか真似のできない取り組みが実践されています。また議会基本条例を陳腐化させず、一過性のものとならないために、毎年4月に議会の年次計画を立て、継続性を担保している点も注目です。実践を怠らないように自らを律することに繋がっています。
板橋区でも議会改革の必要性を認識し、これまでに分割質問の導入・IT機器の総括質問での使用・議会ネット中継・23区初となる議会報告会の実施・議会基本条例の制定など、一歩一歩改革を実現してきました。ただし飯綱町の取り組みと比較すると、施策の具体性や魂の入り方に大きな差があることを認めなければならない。本会議では委員長報告ということが行われるのですが、飯綱町では委員長である議員自らが執筆し、委員長報告を行っているそうです。私の議会では区議会事務局の職員が委員長報告の原稿を書いています。良い悪いは別としても、これまで当たり前と思っていた議会の運営について新たな視点と大きな気付きをいただきました。一般質問などの原稿を区職員が議員のために代筆しているといった噂を聞いたこともあります。「議会改革は議員の意識改革である。」飯綱町の議長の言葉が身に沁みます。